芝コースに於ける天候X馬場状態の影響速度

競馬予想をする方であれば常識として馬場状態によってタイムが変化する事は知られていると思います。芝コースであれば良馬場よりも稍重が、稍重より重が、最終的には不良馬場が、同じ距離を走っても、数秒以上余分に掛かるわけです。

 

しかしながら、この様な事実は知っていても具体的な数値として認識されているでしょうか、多分、あるべき指数を決めて、馬場状態によるバイアスを各レース毎に記録するぐらいかと思います。

 

ただ問題点は各レース毎に求まるバイアスが純粋に馬場状態によるものであるか検証されているでしょうか。理屈的にはバイアスは馬場状態だけでなく諸々(同じグレードでも参加している騎手、血統が違う)の条件がコミコミになっている筈です。

 

巷間の指数理論は、このコミコミの部分には目をつぶってロジックを展開しています。従って、どこか曖昧な数値となってしまい。時にご都合主義的に恣意的に扱われてしまっています。

 

数量化理論では、このコミコミで処理されているところを数的(逆行列)に数億回イタレーション(繰り返す)させ収束解を求めて馬場状態のみ影響を算出しています。

 

ただ、算出される影響速度は独立事象を仮定しますが、馬場状態の場合、天候、即ち晴れているか、雨が降っているかによって強く影響される事が想定されます。所謂交互作用が想定されます。その為馬場状態は天候と組み合わせて、晴れて良・稍重・重・不良、曇で良・稍重・重・不良、雨で良・稍重・重・不良、小雨(雪なども含めます)で良・稍重・重・不良がカテゴリー(多元連立方程式の未知数)としてモデル化します。

 

芝コースのデータサンプルは172,521個(2005年6月1日から2012年8月19日までの全ての芝データ)、1個のデータサンプルは各予想因子(30因子)・16716カテゴリの中から馬のレース時に当てはまるカテゴリー情報を持たされ数量化演算されます。

 

こうして求められたデータが上のグラフです。結果は晴れている場合良馬場より不良馬場は1.558Km/hr遅くなり、曇っている場合は1.758Km/hr遅くなり、雨の場合は2.341Km/hr遅くなります。この場合、距離が気になりますが、別に距離因子が設定されて距離の寄与分はそちらに反映され、これらの数値は1000mから3400mまで共通です。また不良馬場の晴・曇・雨の数値がそれぞれ違うのは馬場状態と天候との間に交互作用がある事を示しています。


ダートコースに於ける天候X馬場状態の影響速度

ダートコースは日本では砂コースとなります。子供の頃、砂団子で遊んだ方はお気づきになるとおもいますが、水分を加えると砂が固まって団子にすることできます。言い換えれば水を加えると堅くしかりした性質になる訳です。この為、日本のダートコースでは水分が多くなる。即ち馬場が悪化した方がタイムは良くなるわけです。

 

この事は競馬予想を行う方については衆知の事実かと思います。しかし、上のグラフの中で一つ二つ不思議な事があります。晴及び曇では不良馬場が最も馬場がしまって好タイムがでますが、雨が降っている場合は不良馬場が最高では無く、重馬場が最も良いタイムとなります。この事実も多分、プロの方は知っていると思いますが、数量化理論がここまで微妙な現象を正確な数値の差として捉えているのは驚きですね。

 

ダートコースのサンプルデータは169,313個(2005年6月1日から2012年8月19日までの全てダートレース)、1個のデータサンプルは30個の予想因子・13,381カテゴリーから情報を得ています。

 

なお、芝コースとの顕著な差は上がり・ペース・走破速度にあります。ダートコースではこの3つが略同じになりますが、芝では乖離します。即ち、芝では上がり勝負になる傾向が強いようです。